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1986年 “心肺蘇生法の父”と言われているコブ博士を訪問した
若き日の河村剛史



Vol.5:心肺蘇生法は「あいさつ」

  「心臓で倒れるならシアトルで」と言われ、シアトル市を世界一救急体制の整った都市にした、「心肺蘇生法の父」と言われているレオナルド・A・コブ博士を,1994年(平成6年)2月に神戸で開催された第2回全国救急隊員シンポジウムに招待講演でお呼びする機会を得た.
  この折,コブ博士に「心肺蘇生法の心とは何ですか?」と禅問答のような質問をしたところ,「それは,挨拶だよ」と答えられた.
  アメリカでは,見知らぬ人でも目と目が合ったら,反射的に「ハイ!」などと小声でつぶやきながら,一瞬笑みの表情を表す挨拶の習慣がある.目の前で人が倒れたら,反射的に「大丈夫ですか?」と声をかけるタイミングが同じなのである.
  見知らぬ人にはできるだけ目が合わないように歩いている日本人には,もともと苦手な習慣である.そもそも挨拶は,顔見知りの人,特に目上の人に対する礼儀として教育されているからだ.



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